前回、ご紹介したライト経営相談事務所の代表である中小企業診断士の余合正司先生の研修会の際に、隣に座っていた青年部員さんから、こんな質問がありました。

「補助金や助成金を受け取った場合は収入になるため、利益が出ている年度に受け取ると、税金を支払わなければならないので、損になるのでは?」という質問です。

補助金や助成金の内容に関する質問では無いので、講師の先生にとっては回答しにくい質問ですが、非常に良い疑問だと思います。

一般的には補助金の収入が決定した時に、「雑収入」として計上します。

支払った時に経費となる支出に対する補助金や助成金については、先に支出を行うことが多く、差引計算すると、補助金による所得が発生しないため、問題は生じません。

問題となるのは、受け取った補助金で固定資産(土地、建物、機械など)を購入した場合です。

固定資産を購入した場合、通常は取得時に全額経費とならず、減価償却ができる資産でも、数年にわたって経費を計上する必要があります。

部員さんの質問はこのことを指していたのですね。

「補助金を受け取った場合、収入が確定した年度に収入は全額計上しなければならないのに、その補助金で固定資産を購入し、数年にわたって経費を計上するなら、補助金を計上した年度に利益が出てしまい、税金を支払わなければならないのでは?」ということです。

固定資産の購入のために補助金を申請したのに、税金の支払いにより、予定していた固定資産を購入することができないとなれば、補助金の効果が薄れてしまいます。

このような場合のために、「圧縮記帳」という方法があります。

固定資産の購入のために受け取った補助金と同額の「固定資産圧縮損」を計上し、固定資産の購入金額から減額する方法です(直接減額方式の場合)。

受け取った補助金と同額の「固定資産圧縮損」を計上するため、差引計算すると、補助金による所得が発生していないことになります。

代わりに、固定資産の購入金額は「固定資産圧縮損」の金額分、減額されているので、その後の減価償却できる金額が減少し、「圧縮記帳」を行った部分については、減価償却期間を通して税金を支払うことになります。

なお、補助金を受け取った際に「圧縮記帳」を適用するためには、法人税は申告書の「別表十三(1)」の添付、所得税は「国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書」の添付が必要となりますので、ご注意下さい。

※内容につきましては、記載日現在の法令に基づき、一般的な条件設定のもとに、説明を簡略しております。実際の申告の際は、必ず、税理士または税務署にご相談下さい。